図書館コラム

ALA・米国図書館研修2018レポート

丸善雄松堂では図書館総合展運営委員会との共催で、2018年6月に「ALA・米国図書館研修2018」を実施いたしました。毎年好評をいただいている本研修は、2018年で6回目の開催となり、ALA(American Library Association、アメリカ図書館協会)年次総会の視察と、総会の開催地周辺の大学及び公共図書館を見学しました。訪問先の一部を抜粋してご紹介します。

ALA・米国図書館研修2018のご案内はこちら

訪問先

ALA年次総会(ALA 2018 Annual Conference and Exhibition)

ニューオリンズ公共図書館 ロヨラ大学図書館 テュレーン大学図書館

ヒューストン公共図書館 ヒューストン大学図書館 ライス大学図書館

ローンスターカレッジ図書館 NASAセンターアーカイブ



alalogo

ALA特別フォーラム:次世代の図書館情報学教育と情報スペシャリストの展望
講 師:Sandra Hirsh氏(サンノゼ州立大学The School of Information 教授)
VRやブロックチェーン、IoT技術やビッグデータなど、ディスラプティブ(disruptive)なテクノロジーが著しい発展を遂げる中、社会や地域、その他の利用者コミュニティーにおける図書館の役割は確実に変わりつつあります。今回の特別フォーラムでは、こうした変化に対し情報スペシャリストとしてのライブラリアンに今後どのようなノウハウやスキルが求められ、図書館情報学教育がそのニーズにどう応えるべきかについて、テクノロジー業界にも造詣の深いHirsh氏の見解を伺いました。

 
ローンスターカレッジ図書館
ヒューストンエリアで最大規模の高等教育機関で、アメリカ国内でも急成長しているコミュニティ・カレッジの一つです。コミュニティ・カレッジとは公立の2年制大学で、地域の人にできるだけ安価で大学教育と職業訓練を提供する教育機関のことです。ローンスターカレッジには、今回訪問のCy-Fairカレッジなど6つのキャンパスがあり、2017年には、10代から50代以上の約90,000人が入学しました。


Joint Library

図書館は2003年のキャンパス新設と同時にオープンしました。ハリス郡の公共図書館とカレッジの図書館が複合した運営形態で、館内もシームレスにつながっています。運営費は公共図書館、管理費は大学から出されており、資料費は購入する本の内容によって出どころが決まります。

CIMG4245カウンターの様子


ニューオリンズ公共図書館
1843年に設立された公共図書館で、中央図書館は1958年にニューオリンズのビジネスエリアにオープンしました。3階のフロアからなり、アフリカンアメリカンやルイジアナ州アーカイブなどを所蔵しています。ハリケーン「カトリーナ」では5館が冠水し閉館、職員も20名まで減少しました。


Best Buy Teen Tech Center

家電量販店Best BuyとMITメディアラボのクラブハウスネットワークの2つから予算が措置されてつくられたセンターです。「やりたいことができる場所、失敗しても良い場所、自分を表現できる安全な場所を提供する」ことをコンセプトに掲げ、コンテンツを消費するだけでなく、作成の支援も目的にしています。PC、3Dプリンター、音楽編集スタジオ、オーディオミキサー、ミシン、VR、グリーンスクリーン、アイロンビーズ、ラズベリーパイ、LEGOなどを利用することができます。


ローザ・F・ケラー図書館

冠水した分館のひとつで、2016年に再建しました。もともと個人の家でしたが、売りに出された際に、ちょうど分館を立てる計画が持ち上がっていたことから図書館として活用されることになりました。館の名前は、公民権運動の指導者として活躍したローザ・F・ケラー氏に因んでいます。 2005年のハリケーンの際は、3.5メートル近く冠水したため、市は図書館を取り壊し公園にすることを検討していましたが、住民の反対運動により再建されることとなりました。再建後は、米国建築家協会・米国図書館協会主催の2017年図書館建築賞を受賞しています。コミュニティセンターと一体化しており、市民の娯楽スペース、カフェ、キッチン、教室なども備えられていました。


CIMG4018Best Buy Teen Tech Centerのミシン


CIMG3947ローザ・F・ケラー図書館


ライス大学図書館
1891年に設立された私立大学で建築、工学、人文社会などの学部があります。2018年の世界大学ランキングでは米国内14位、世界86位の名門大学で、教授一人当たりが担当する平均学生数は6名と少人数で質の高い教育が特徴です。中央図書館にあたるフォンドレン・ライブラリーでは、図書の貸出しや特別コレクションの管理運営のほかに、デジタル・メディアコモンズや、デジタル・キュレーションラボなどの施設を備えています。


Library Service Center

キャンパスから約8キロ離れた場所に、2004年に設置された遠隔保管庫です。所蔵資料のうち、重複したもの、貴重書、利用率の低いものを中心に保管しています。現在135万点を保管していますが、最大で150万点まで保管可能となっています。内部は気温13度、湿度30%に保たれています。


シェアードプリント・プロジェクト

カリフォルニア大学が中心となり、アメリカ西部の100以上の研究図書館、大学図書館が参加するシェアードプリント・プロジェクト、WEST(Western Regional Storage Trust)に2012年から加盟しています。この取り組みでは、冊子体の雑誌を共同で保存し、紙媒体での学術雑誌リポジトリの分散型のネットワークをつくることを目指しており、ライス大学はアーカイブビルダーとして重要な資料を長期保存しています。


CIMG4273遠隔保管庫


ヒューストン公共図書館
米国内で最大級のサービス提供エリアをもち、35の分館と特別コレクションを扱う3つの図書館、4つのExpress Libraryから成り立っています。中央図書館では、就職のエントリーや履歴書の書き方、面接の準備などのサポートをするOpen Job Labや、ストレス解消のためのヨガ講座など、日々様々なプログラムが提供されています。
Transformationをテーマに、今後、7つの地域にフルサービス・ライブラリー(本館と同じ機能を持った図書館)、17のTECHLink、23のNeighborhood Library、4つのExpress Library(本が無く、PC等のみ置いてある施設)を設置する予定です。また、スペシャルコレクションとして、ヒューストンの地域資料、ファミリーヒストリー、アフリカンアメリカンに関する3つを既に有していますが、新たにヒスパニック系のコレクションを設ける予定です。


TECHLink

TECHLinkは、音楽、映像、コーディング、グラフィックデザインの最先端のテクノロジーにふれることができる、創造性、自己表現、コラボレーションに焦点を当てた学習空間です。サービスエリアのあらゆる人を対象にしており、図書館は今後も同様の空間を増やしていく予定です。また、インターネットへのアクセスを提供するだけでなく、履歴書の書き方などの就職支援も主要なサービスとして行っています。テクノロジーに関しては、TECHLinkだけでなく、モバイルwifiアクセスのスポットを用意したり、持ち帰り可能なラップトップの貸出しを実施していました。


CIMG4330TECHLink内部


CIMG4346編集スタジオ