図書館コラム

アメリカ図書館界を俯瞰してー2016(その3)

アメリカの大学・学校・公共図書館それぞれの状況、および図書館界全体の現状について簡単に紹介するシリーズ「アメリカ図書館界を俯瞰して」2016年版。前回はアメリカの大学図書館と気になる雇用・給与事情についてお伝えしました。今回は、アメリカの学校図書館についてご紹介します。
※この内容はアメリカ図書館協会(American Library Association, ALA)が発行する『State of America's Libraries Report 2016』より一部抜粋し翻訳したものです。より詳細な情報を知りたい方は、原典をご参照ください。

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■アメリカの学校図書館:職員とのリエゾン、デジタルリテラシーの砦、 ガイドラインの遵守

ALAの報告によると、学校図書館司書に期待されている役割は下記の三つです。

1)職員との関係構築
2)デジタルリテラシー向上のためのきっかけづくり
3)学校内におけるAASL標準やガイドラインの遵守の徹底


■1)学校職員との関係構築

学校職員のほとんどは着任当初、学校図書館の役割があまり分かっていないのが現状です。そんな職員が図書館司書の役割について知っていることのほとんどは、図書館司書自身が情報源になっているようです。
例えば:
・校長職候補が学校図書館について正式な研修を受ける割合はたったの10%。
・図書館司書の指導的役割についての一番の情報源が学校図書館司書との交流と答えた校長が65%。
このことから、図書館司書の役割や価値の周知は、自らコミュニケーションを図って取り組んでいかなければならないと言えるでしょう。

■2)デジタル・ラーニング

学校におけるデジタル機器の導入や使用方法の説明などは引き続き図書館司書の役割として認識されており、デジタル資料またはツールに関して、リソース・レーニング・戦略の3つの領域において学生、教員、職員を支援する必要があります。
学校図書館の司書のうちデジタルのコンテンツを購入していた割合が2010年は35%だったのに対し、2015年には69%に急増しています。また、時代の変遷と併せて課題も変化しており、例えば:

1)ネット環境の不備
2)学生が学校で機器にアクセスできない(恐らくないから)
3)適当なデジタル コンテンツが見つからない
4)教員がデジタルコンテンツが使えない

などが挙げられました。

■3)AASL標準とガイドライン

AASL(American Association of School Librarians)は昨年、AASL標準のリモデリングに着手しました。その一環として実施したアンケートに回答した図書館司書のうち、実に91%がAASL標準をよく知っていると答えました。

また、AASL標準についてどう思うかという問いに対しては、多くの司書が「関連性がある」「よく整理されている」「実践的である」「簡単に使える」「簡単に説明できる」と肯定的にとらえている一方、41%が「更新が必要だ」と答えました。

図書館や図書館司書の価値をどう伝えるかという問題は、ほかの館種にたがわず学校図書館の領域でも大きな問題になっています。伝える前にまずは把握から…ということで、学校図書館や司書が子どもたちの学習にどれだけのインパクトを与えているかを調査した結果は下記の通り。

 

1)図書館司書を通して書籍にアクセスした生徒は生涯において読書に対して肯定的で、読書量が多い。
2)フルタイムの資格を持っている司書がいる学校はテストの成績が高い。
3)開館時間の延長や柔軟なスケジューリングは学生の成功と直結する。
4)予算の拡充と所蔵資料の大きさ、新しさ、多様性はテストの成績の向上に貢献する。
5)学校図書館司書と教員の共同計画は学習の効率を高める。
6)学校図書館への来館数と生徒の達成度は比例する。
7)学校図書館が提供する設備や機器は、学生が情報化社会をうまく生きていけるよう、 また将来的に就職したときのために有用。

などが挙げられました。
次回は、アメリカの公共図書館「より良いデータがより良い図書館をつくる」をお届けします。お楽しみに!


RESOURCE: American Library Association, "State of America's Libraries Report 2016," accessed April 18, 2018, http://www.ala.org/news/state-americas-libraries-report-2016.