図書館コラム

アメリカ図書館界を俯瞰してー2017(その2)

アメリカの大学・学校・公共図書館それぞれの状況、および図書館界全体が直面する課題や最新のトレンドについて簡単にご紹介します。
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※この内容はアメリカ図書館協会(American Library Association, ALA)が発行する『State of America's Libraries Report 2017』より一部抜粋し翻訳したものです。より詳細な情報を知りたい方は、原典をご参照ください。

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■大学図書館の存在意義を高め、知らしめるということ

●大学図書館が学生に与えるインパクトとその示し方
ALA内に設置されているACRL(Association for College and Research Libraries: 大学および研究図書館協会)は、 大学図書館が学習や学業的な成功において学生に与えるインパクトを正確に評価するための行動志向的な調査を実施するにあたり、 次の2つの問いを軸に据えました。
1)大学図書館は所属するそれぞれの機関のミッションや志向する効果に対してどのように貢献しているか?
2)図書館がこの貢献度を効率よく所属する機関や高等教育におけるその他のステークホルダーに伝えるにはどのような方法を採用すべきか?

つまり、大学図書館の存在価値を示すだけではなくて、その示し方も重要だとしているということになります。


●大学図書館は学業成功の要
ACRLが実施した調査によると、大学図書館は主に下記の4つのポイントにおいて学習支援と学生の学校での成功に貢献しています。
1)新入生に対して図書館が実施する情報リテラシー講座は、その後4年間の大学教育の準備として有益である
2)図書館の利用率と学業の成功は直結している
3)図書館と大学の他組織との連携は、学習効果を増幅させる
4)情報リテラシーに関する説明会の実施は、教育全般のアウトプットを強化する

また、同調査によると大学に入学するまでに情報の質や信頼性を評価した経験がある新入生の割合が44.8%であるのに比べ、今回の調査に回答した1回生の77%が研究を経験したことが知識、スキル、個人的な成長に貢献したと答え、4回生に至っては実に83%がそのように回答したとのことです。


●増えるPDAまたはDDA
また、ACRLが収集したデータによると、伝統的な蔵書構築からPDA(patron-driven acquisiton)またはDDA(demand-driven acquisition)に移行している機関は増加傾向にあるとのことで、大学院および研究大学でその割合は51.2%、総合大学で37.7%、バカロレア認定校では27.6%、短大で18.4%となっています。


●広がるオープン・エデュケーション
また、オープン・エデュケーション・イニシアティブ(オープンアクセス教材の採用、教材またはその他の学習リソースの公開)へ参画する図書館も増加傾向にあり、その割合は大学院および研究大学で40.5%、総合大学で22.4%、バカロレア認定校では21.2%、短大で24%となっています。


●大学図書館司書の給与事情と業務領域
2015年に図書館情報学の学位を取得した卒業生の就職先の割合は、司書職全体に対して大学図書館が23.7%、 平均収入は$46,850(約510万円)でした。 これは2014年と比べて9.4%の増加となります。また、その多くは学術的コミュニケーション、デジタルアーカイブ、データキュレーション、 デジタル人文学、可視化、ボーンデジタルなどのデジタルプラットフォームに関する業務に従事しているとのことです。

ちなみに、給与が図書館予算全体に占める割合は、短大で89.8%、バカロレア認定校で70.5%、総合大学で74.7%、 大学院および研究大学で60.7%、全体では62%でした。


RESOURCE: American Library Association, "State of America's Libraries Report 2017," accessed March 7, 2018, http://www.ala.org/news/state-americas-libraries-report-2017.